8/5に父が緊急入院、手術しました。そんなこともあってここ1ヶ月は非常に慌ただしかったのですが、無事本日退院できました。
とりあえず他の方にも何かの参考になるかもしれないので、経緯をエントリにしておきたいと思います。
- 7/19
両親と姪っ子を連れて近所の祭りへ行く。暑いさなかにも関わらず息子の相手をしてもらいつつお祭りを楽しむ事ができ、少なくともこの時点で父は元気だった。(※ただ、今から考えると若干歩くのが遅かったような印象)
その後数日して実家から「ここ数日食欲がない」「最近足がふらついている」などの連絡があった。
- 7/28
26日夕方散歩に出かけた際、激しい目眩に襲われて歩けなくなり、それ以後立って歩く事が辛くなった。高血圧治療の為に飲んでいた降圧剤の副作用かと父が自己判断し、しばらく飲むのをやめているとのこと。
母が病院(循環器系内科)へ連れて行き、血液検査や胸部レントゲン等の検査を行うも特に所見なし。単なる夏バテではないかと診断され、点滴のみで帰宅。医師には降圧剤は無関係と言われ、また飲み始める。この後、数日で症状は急激に悪化。本人が訴える症状は下記の通り。- 朝方に頭痛
- 目眩(恐らく頭位性)。ただし暫く座っていれば治まる。
- 運動障害(特に歩行)
- 吐き気はないが食欲は減退
- 8/2〜4
殆ど自力では歩けない状態になってしまう。父とは同居しておらず、26日以降は母から電話で状況を聞いていただけなので、とにかく本人から詳しく症状や経緯を聞く。
これまでに服用していた薬も全て調べたが、高血圧治療の為の降圧剤と、頭痛を訴える為に母が飲ませた頭痛薬(釣藤散)のみ。降圧剤はアムロジン 5mg、オルメテック 20mg。アムロジンは一年以上の服用歴がある。
状況を整理し、色々調べてみて可能性を探る。5月に階段から転落して頭を打っている事もあるので、とにかく脳神経外科を受診してCTをとってもらうのが先決。ただし両側性(両足に症状がある)である事や症状が薬剤性パーキンソニズムに酷似していることから、Ca拮抗薬であるアムロジンの副作用も疑う。薬剤性パーキソニズムの症状は下記にある通り両側性で発症タイミング等も条件に合致している。パーキンソン病のような症状が薬の副作用としておこる場合を薬剤性パーキンソニズムといいます。服用開始からパーキンソニズム発症までの期間は3〜4ヶ月のことが多いのですが、数週間〜数年とかなりのばらつきがあります。症状はパーキンソン病に非常によく似ています。ただし振戦で始まる例は少なく、両側性のことが多いといわれます。薬剤性パーキンソニズムは原因となっている薬を減量・中止すれば症状は改善・消失しますが、症状の回復までには数週間〜数ヶ月かかります。症状が重い場合や自然回復が遅い場合には抗パーキンソン病薬が使われますが、一般にはレボドパはあまり効かず、抗コリン剤、ドパミンアゴニストが主に用いられます。
特に立位で前のめりになってしまうため歩幅が小刻みになったり、何故か一歩が踏み出せず立ち尽くしてしまうといった症状を訴えている。これはパーキンソン様歩行やすくみ足(frozen gait)といったパーキソニズムに見られる歩行障害である可能性がある。また、わずかながら痴呆のような症状も出始めているような気がした。ただし振戦や麻痺、ジスキネジア(不随意運動)やアカシジア(静座不能)などの症状は出ていないようだ。
他には釣藤散に含まれる甘草による偽アルドステロン症なども疑ってみたが、飲んだ回数や量からするとこれは除外しても良いと考えた。ただし釣藤散には血圧を下げる効果もあり、降圧剤との併用に関して不安な点もあったので、母に飲ませないように指示。
これまでの経緯や症状を全てメモにまとめて病院の受診計画を練る。とりあえずセカンドオピニオンという意味合いも兼ね、28日に受診した病院ではなく5月に階段から転落した際に受診した病院へ連れて行く事にした。以前撮った頭部CT画像もあるはずなので都合が良い。
- 8/5
会社を休んで父を病院へ連れて行く。殆ど自力で歩けないので車椅子に乗せ、受付相談窓口の看護師に経緯を説明。脳神経外科で検査後、何事もなければ神経内科を受診するという段取りで調整してもらう。
脳神経外科の受付で待っている間、何度かペットボトルの飲み物を蓋を開けずに飲もうとする。会話はなんとなく成り立っているが、少しずつ様子がおかしくなっているようだ。
CT検査後に脳神経外科で「慢性硬膜下血腫」と診断される。左右に血腫があるために両側性の症状が出ているようだ。神経内科の受診はそのままキャンセルし、緊急入院して夕方手術することに。
術式は「穿頭洗浄ドレナージ術」というもの。頭蓋骨に小さな穴をあけ、血腫の外膜を少し切開して中にドレーン(カテーテル)を挿入。1〜3日程度生理食塩水で中に溜った血液を洗い流すというもの。脳外科手術の中では比較的簡単なものらしく、また手術後の経過さえ良ければ4日~1週間程度で退院でき、比較的完治する可能性の高い病気らしい。手術前まで歩けなかった患者が術後すぐにちゃんと歩けるようになることもあるとか。
手術は片側30分程度で両側行う必要があり、1時間半程度とのこと。局所麻酔でも可能だが体への負担等を考えて全身麻酔で行うとのこと。簡単な手術とはいえ、再発や手術中に発生しうるリスク等々の説明を受け、同意書類にサイン。手術前検査を一通り行ってICUへ。
暫くして手術の準備が整ったとのことで、手術室へ移送。実際には2時間半近くの時間がかかった。術後全麻から目覚めた後再度ICUに呼ばれ、言葉を交わす。もちろん元気はないものの、きちんと会話ができた。 - 8/6 ~
その後、数日で回復。手術翌日に発熱があり、インフルエンザの可能性もあるので数日個室に移されるというトラブルはあったが、単なる炎症反応だったのだろうとのこと。4日後には大分元気になっていて食欲もあり、食事もきちんと取れるようになった。
立って歩くこともまず問題なさそうで、術後しばらく苦しめられた頭痛も治まってほぼ体調を崩す前の状態に戻った感じ。
といったわけで、何とか一安心といったところです。
慢性硬膜下血腫は症状が痴呆などと似ていて、ともすれば「最近呆けてきちゃったんじゃないの?年も取ったし」などと言って見過ごされることも多いと言われているようです。更に父の場合は3ヶ月前に頭部打撲があるという事実を家族が知っていたためにCT検査を優先して(悪い方のシナリオではあったものの)事なきを得たわけですが、本人を含めそのことに気づかない、または打撲が無くとも発症するケースもあるようですので注意が必要ですね。