精神病棟の二十年

精神病棟の二十年―付・分裂病の治癒史
松本 昭夫
新潮社 (2001/09)
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5 人生の苦悩の重み
1 フロイト学説の犠牲者
3 生きにくさ

『精神病棟の二十年』(ISBN:4101326312)を読み終えた。この本は21歳で分裂病に罹患した筆者自身によって綴られた回復のプロセスである。筆者は昭和31年、21歳の時から20年にわたって精神病院への入退院を繰り返し、40歳にして社会復帰を果たす。

いわゆる電気ショック、インシュリンショック療法についてや、(筆者が入院する頃には既に行われなくなっていたらしいが)ロボトミー手術を受けた患者などの描写はあるものの、大熊一夫氏による『ルポ・精神病棟』(ISBN:4022604948)にあるような、行過ぎた加療による凄惨さや陰鬱な印象はなく、淡々と自身の経験や分析を綴っている。

筆者は、精神疾患が女性関係(特にセックス)に依拠すると考えており、本書の中でもフロイトという言葉が頻繁に登場しているが、フロイト理論だけで完結するほど精神疾患の原因は単純ではないだろう。

まあそれは置いておくとして、本手記のいたるところで指摘されている精神疾患治療における問題点(投薬偏重の加療、カウンセリングや社会復帰対策の必要性)などは、現在においても未だ十分に解決されているとは言い難いということだけは確かであり、考えさせられる。

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