右脳信仰

最近、巷では“右脳信仰”が盛んであるように思う。テレビなどではよく驚異的な暗算能力や速読術などを披露し、それらの能力には「右脳」が大きく関わっている、と言う。先日の某テレビ番組によれば、右脳を鍛えることによって本の表紙を見るだけで内容が「透視」できるようになれるらしい(苦笑)

まあ、そこまで行くと開いた口がふさがらないのだが、とにかく近年徐々に「右脳信仰」が加熱してきているように見える。

右脳では、視覚や聴覚の情報が主に処理されていると言われている。絵画を見たり、音楽を聞いたりするときに右脳が活発に働くことが、MRI(磁気共鳴画像)やPET(陽電子放出断層撮影)などの実験によっても明らかにされている。左脳では主に、言語や理論的な思考が処理されていることが分かっている。

そんな風に聞くと、なんだか右脳をよく使っている人のほうがアーティスティックで“おしゃれ”なような気がしてしまい、左脳を良く使っている人は理詰めで物を捉え、屁理屈ばかりこねている人間、というイメージを勝手に抱いてしまうだろう。そしてテレビで右脳礼賛番組が放映されると、心理テストのようなカンタンなチェックによって自分が“右脳派”であることを確認し、一喜一憂してしまう。

そんな“右脳至上主義”は、間違った解釈を基盤にして構築されている、いわば“幻想”のようなものだと思う。

まず、右脳と左脳というのは「脳梁」と呼ばれるもので繋がっていて情報のやり取りが行われており、常に関与し合っている。そして機能的に見ても、脳は完全に左右に綺麗に分かれているわけではない。“主に”左脳で処理されている、と言われている言語機能に関しては、どちらの脳が優位かということで見ると、確かに9割以上で左脳が優位であるらしい。

だが、しゃべる、聞く、と言うことに関しては言語機能が左脳だけにあると思われる人は6~7割に過ぎず、女性では右脳にも言語機能が分かれている率が高いと言われているのだ。また音楽を聴き取るのは“主に”右脳だと言われているが、それも「右脳だけ」と言う意味ではない。特にプロのミュージシャンや絶対音感を持っている人、また音楽の“リズム”に関しては、左脳の関与が強いらしい。

そういう実験結果からも、(個人差はあれ)脳の機能は完全に左右に局在しているわけではなく、左と右とが絶妙なコミュニケーションを果たして機能しているのだ。

僕は要するに重要なのは「バランス」と言うことだろう、と思う。

“アーティスト”を気取ったスノッブな連中に、したり顔で「ボク、右脳派なんだよね」なんて言われると、「アホかこいつは」などと思ってしまう。「主に右脳を使っている」と言うことと、「才能がある」ということとを混同してはいけない。

あたりまえの話だ。

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